生誕1000日見守りプロジェクト

コラム

 本研究も開始から8年となります。いろいろなことがありましたが、今回はコロナ禍と子育て中のお母さん・お父さんの「コロナ禍でのやりくり」について考えます。それは困難な状況にも何とか対応していく、たくましい「レジリエンス」として、我々にいろいろなことを教えてくれました。
 *写真は、私たち研究班がコロナ禍の「波」の合間に開催した大阪・エキスポシティでのイベントの様子です。
中本 剛二

中本 剛二

専門:文化人類学
大阪樟蔭女子大学准教授
大阪大学特任准教授
#001
2025.06.25

コロナ禍の体験とレジリエンス

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 皆様、はじめまして(中にはお久しぶりの方もいらっしゃるかもしれません)。このホームページでのコラムを担当する中本です。
 はや、私たちの研究も今年で8年目となりました。本コラムでは、今しばらくはその歴史をひも解きながら、その時々に私が考えたこと、スタッフの間で考えたこと、研究参加者の皆さんに教えていただいたことなどを中心に、時には私の専門である文化人類学や民俗学の知見も踏まえながら記していきます。そして、おいおい、ほかのスタッフにも執筆依頼をしていきたいと思っています。

 本研究がスタートして最初の数年間、私は阪大病院を受診される研究参加者の皆さんに、継続してインタビューする機会を得ました。対面のインタビューで当初は順調に進んでいたのですが、あのコロナ禍がやってきました。病院では不要不急の受診を一時控えた時期もあり、またさまざまな配慮が必要となる中で、対面でお話を聞くことは難しい場合も出てきました。そのため準備を整えたうえで、その時一気に普及したZoomなどのweb会議システムを使ってインタビューを行うことも始めました。同時に、妊娠中・子育て中のお母さん方が孤立していることも耳に入るようになりました。そこで、Zoomを使ったweb座談会も企画し、開催することになりました。Web座談会は、2020年6月に第1回を開催しています。それらインタビューやweb座談会の中で、コロナ禍の状況のリアルな体験をいくつも伺うことができました。

 コロナ禍においては、私たちの日常を支えていた様々な仕組みやつながりが機能不全に陥りました。これまであたりまえと思っていた仕事や学業のルーティンをこなすのが難しくなりました。そして私たちの一生の始まりと終わりである出産と臨終を迎える場面でも、立ち合い出産ができなくなったり、臨終によりそうことができなくなったりと、それまでと同じ形では経験することができなくなりました。

 その中でも、子育てをするお母さん、お父さん方の力強さを感じさせてくれるお話がありました。例えば、バリバリ働いている女性の場合、「これまでなら出張しないと会議に参加できなかったけど、オンラインの会議が普及することで、取り残されることなく会議に参加できるようになった。そして出産の間際まで仕事ができて好都合だった」、といったお話がありました。また、「幸か不幸か夫が在宅勤務となることで、ワンオペになるはずだったけど子育てを分担できた」、といったお話もありました(その反対に、「夫の分、家事負担が増えた」、というお話もありましたが・・・)。

 私たちの世代がこれまで経験したことのない規模の、パンデミックという災害の中で、状況に対応し、何とかやりくりする方法を見つけ、よりよい在り方を模索する人の力強さを教えていただいた気がしました。これらは最近よく耳にする「レジリエンス」という概念につながっています。そして私たちの研究でも、この「レジリエンス」がひとつの重要な概念となっています。

 その反対に、コロナ禍の状況で、様々な不安についても伺いました。座談会ではそれらにお答えすることも心掛けて行ってきました。それらの話についてはまた今度、ゆっくりとお話しできればと思います。
今回はご挨拶もかねて、このあたりで失礼いたします。

中本剛二(文化人類学・民俗学)
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